2017年2月17日金曜日

「証拠保全」

 2016年12月9日、社会福祉法人藤倉学園に対し、裁判所の職権で、証拠保全の手続きを行い、民事賠償手続きに着手しました。

証拠保全は裁判所に申請し、被告が保管している内部資料の改ざんや隠ぺいを防ぐため、裁判官立会のもとで資料の撮影をするもので、撮影結果は証拠資料として裁判所に保管されます。

開始の少し前に命令書が送達され、実行されます。
息子の事故では施設として保管を義務付けられている「生活の記録」を証拠保全の対象資料として実施しました。

AM10:30に、東京地裁立川支部の裁判官・書記官と専門カメラマン、弁護士と夫婦で待ち合わせ、現場の入所施設の多摩藤倉学園に立ち入りました。
提出された資料を裁判官と書記官が確認し、カメラマンに渡され撮影されていきます。
AM12:30に終了し解散しました。

1月に出来上がった調書の控えを確認し、保護者に知らされていなかった以下の事実が判明しました。

息子は入所直後から大声で奇声を発するようになり、次第に症状がエスカレートしていったこと。
担当医師から、保護者の同意を得て、薬の処方を勧められていたこと。
それに対し、施設側は支援で十分対応できるとして、医師の勧めに従わなかったこと。
その後、制御が難しくなってきたこと。

息子はひと月に2回以上帰省していましたが、亡くなるひと月前の8月中旬までは、自宅にいるときに大声で奇声を発することはなく、私達が異変に気付いたのもその頃からです。
当方から施設との連絡帳に異変を伝える記録をしてから、施設側もその件に言及していますが、それまでは重要な事項についての報告・連絡・相談がなく、入所の継続を止めるという保護者の選択を阻止していました。

息子が施設を出て戻ってこなかった理由として、施設を嫌悪する事情があったものと考えています。

息子の事故に対する施設の姿勢は以下の点で「人道」に外れていると考えています。

1 医師の勧めがありながら、症状の異変を保護者に報告せず、制御が困難な状態に至らしめた。
2 行方不明のきっかけになった職員の過失の数が尋常ではなく、障がい者の命を軽んじていた。
① 点呼を取らない。
② 扉の立会開閉をしない。
③ 不測事態の連絡を怠る。
④ 無断で持ち場を離れる。
⑤ 防犯カメラ装置の不具合放置。
⑥ 出入り口に施錠しない。
3 施設に不利な情報を隠蔽する体質があった。
① H26.11.30に発生した入所の子供が施設から出て交番に保護された事故を行政に報告していなかった。
② 息子の行方不明の連絡を受け、施設に駆け付けた時、防犯カメラは設置していないと当時の学園長から嘘をつかれた。
故障の放置を知られたくなかったからである。
4 個々の入所者に対する担当者を決めておらず、責任の所在を定めていない。
5 責任者に対するしかるべき責任を取らせないばかりか、昇格・留任させている。
① 事故当時の理事の一人を理事長に昇格させている。
② 施設責任者であった当時の学園長を理事に留任させている。
③ 施設の準責任者であった当時の副学園長を学園長に昇格させている。
6  過失による死亡事故に対し障がい者を差別した賠償額を呈示し、それ以上の法的責任はないとしている。

息子は施設の「障がい者の命を軽視する体質」の犠牲になりました。
訴訟では「人道に対する罪」の賠償を請求してまいります。

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の第一条には以下のとおり明記されています。

第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

行政や事業者だけではなく司法の判断にもこの条文の主旨が配慮されることを願っています。


 
証拠保全の作業 左から 裁判官・書記官・カメラマン

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